爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第5章 悪意 中國山地
「そんな所かもしれん。ニホンの大きさや封建体制はイタリアやドイツのそれらと似通っている」
へぇ。延原は感心した。
「随分と造詣が深いな」
「祖父が歴史学者だった。その影響を受けた」
「そりゃいいな。家で歴史や文化の話なんか俺は聞いた事が無いから、なんか羨ましいよ」
「家で何の話をしていたんだ?」
「御近所の噂話や悪口。上司からいじめられた愚痴とかかな」
「……どこも似たようなものだろう。俺も親がそうだった。だから、祖父の所にいたんだ」
延原はそう言われるとまっとうな顔付きをした。
「子供はあんなもの聞いたらいかんな。頭が腐っちまう」
「ああ、実に不毛だ」
ジャルコの声はどこか寂しさを抱えていた。
数刻の間、互いは黙っていた。
「……さて、と」
黙り込んでいた延原は賽銭箱から腰を下ろし、ジャルコの方へ歩み寄った。
「益田の街は西石見の玄関だ。人口は5万人程度だが、ここを抜かれると浜田港も江津(ごうつ)も一気に抜かれる」
「だからこそ、先に」
「そうだ。防長を手にして、奴らを関門海峡から陸に上げさせん」
「防長の守りは薄いのか」
「ああ、そうだな。どっちつかずにやって来たから。あの女が県令を殺ってから、すっかり内戦みたいだが、戦力としては知れている。それこそ、君の部隊を送り込んで機関銃でも撃ち込んだら直ぐにこうさ」
延原は両手を頭の上に伸ばし、顔をわざとらしく強張らせた。
「ふん。そんなものか。なら、一気に仕掛けてしまえばよい」
「浮田将軍と同意見だな。さっさと防長を叩いて、小倉の機先を制したいみたいだ」
「なら、なぜやらない?」
ジャルコは少し食付き気味に述べた。
「それが政治だよ、ジャルコ。福原官邸はどうやら防長の畿内派からSOSを受けた上で本格的に戦いたいようだ。実際、あの女の件はこちらの関与じゃない事になっているが、実際は言わずもがなよ。挑発は利いている」
ジャルコは思わず溜息をついた。
「やはり俺はモウリ嫌いだ。モトハルのが余程良い」
「そう言うだろうとは思ったよ。ただね、君」
「なんだ?」
「宇喜多公は元就より良く似た人物がいる」
「誰だ?」
「そいつは宇喜多直家(うきた なおいえ)。全てを失いながら一代にしてその全て以上のものを奪い得た梟雄(きょうゆう)だ」