第7章 走れサンタ!/二口堅治
――と初めて会った時、あいつは俺の名前をカタカナの『ニロ』と勘違いした。それからは俺のことを『にろちゃん』と呼び続けてる。
始めは変な呼び方をするなと嫌がっていたのに、いつの間にか定着してしまって、俺もそう呼ばれるのが平気になってしまった。つくづく恋心というものは厄介だと思う。好きな相手になら何をされても大抵の事は許してしまえるようになるのだから。
『お前、それ誉めてんの? 微妙に馬鹿にしてね?』
『してないよ。めちゃくちゃ褒めてる! 背が高いっていいよね。羨ましい』
――俺を見上げるの姿に、自然と頬は緩む。の瞳の中の自分の顔が情けないくらいにやついているのが見えて、軽く咳払いを一つする。仕方ないよな、見上げてくるが可愛いんだから。けど彼女に心底惚れこんでるなんて、なんだか自分らしくない気がして、ちょっとかっこつけてしまうんだ。
『そっかぁ? まあ運動では有利だけどな。…お前はそのくらいで十分じゃん。ちっこくて可愛いって』
『ちっこい言うな! 気にしてるんだから』
――はクラスでも背の順は前から数えた方が早いくらい。でも伊達工はほぼ男子ばかりだから、比較対象の女子自体が少ない。
クラスの女子が比較的長身の子が多かったから、言うほどは小柄ではなく、女子の平均的な身長だと思う。けど、184センチある俺からしたらどうしたってちっこく見える。それはに限ったことじゃないけど。
『悪ぃ。でもそのままでいいよ、は』
『……私はもっと背が高くなりたい』
――多分、は俺を見上げるんじゃなくて、対等に目と目を合わせたいのだと思う。でもそれじゃあの身長が180越えのスーパーモデル並みになってしまう。どんな彼女でも好きになれるとは思うけど、さすがに俺と同じ身長ってのはどうだろう。それに俺にとっては、今のの身長がベストなんだ。