第15章 スモーキー・ブルース/烏養繋心
起き上がって、さんの方に向き直る。
俺が動くと彼女は恥ずかしいのか布団をかぶって隠れてしまった。
「あのなぁ、さん」
力任せに布団を引っぺがすと、真っ赤な顔のさんが現れた。
自分で言って煽っておいて、これじゃあダメだろう、なんて意地悪い考えが浮かぶ。
恥ずかしさで顔を覆う彼女の両手を引きはがして、手首をつかんで顔の横に押し付けた。
「アンタ、自分が何言ってるのか、本当に分かってんのか?」
わざとゆっくり顔を近づける。
下した俺の髪の毛が彼女の顔にかかるくらいまで近づくと、じぃっと彼女の目を見つめた。
恐怖か、期待か、そのどちらもなのか。
さんの瞳はゆらゆらと揺れながら俺をじっと見つめ返している。
「俺の好きにされる覚悟が本当にあんのか?」
ぐっと手首を握る手に力をこめて、首筋に口付けを落とす。
触れて離れただけなのに、さんは小さく震えている。
怖いのか。
彼女の本心を確かめるように、もう一度細く白い首筋に唇を触れさせた。
今度はそのまま、彼女の首筋をなぞるようにゆっくりと唇を動かす。
すると、今度は大きくビクリと体が波打って、羞恥に耐えかねるのか、顔を覆いたそうに俺の拘束から逃れようと必死に抵抗し始めた。
「おい、逃げるつもりか? ここまでさせておいて」
「ご、めんなさ……」
「謝って済ませると思うか? ……前に言ったろ、悪い男かもしれねぇぞって」
押さえつける力を強めて、彼女の目の奥を覗き込む。
小刻みに震える彼女の目からは、涙の粒が今にも零れ落ちそうだった。
「なぁ、さん。アンタ俺と結婚したいんだろ。結婚するって言ってる以上は、こうなる覚悟はしてたんだろ?」
「わ、たし……」
ここで悲鳴でもあげられたら分が悪いのは俺の方だ。
下手すれば訴えられる可能性だってある。
それでも止められないのは、彼女に現実を見せて脅したいからなのか、それとも……。
首筋にまた口づけを落とし、そこからはだけて露になっている肩まで、鎖骨を伝ってなぞるように舌を這わせた。
「やっ……」
さんは体をくねらせて、俺を拒んだ。
ぎゅっとつぶった目からは大きな涙の粒がこぼれ落ちてく。