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ハイキュー!! まとめ

第9章 まっすぐ!/黄金川貫至


「でも、バス…」

ちらりと横目で見やったバスの運転手と黄金川の目が合った。

『ご乗車されますか?』

運転手にそう尋ねられ、黄金川はぶんぶんと首を振った。
扉を閉めたバスは、雨の中走り去っていく。
どんどん遠くなっていくバスを見送って、がぽつりと言った。

「…良かったの? 乗らなくて」

黄金川はすぐには返事が出来なかった。
今日は嬉しい出来事が重なったからといって、いささか調子に乗りすぎたのではないか、と内心冷や汗をたらしまくっていた。

ガツガツ行き過ぎたら、ひかれてしまうのではないか。
せっかく連絡先を交換するまで進展したのに、欲張りすぎたかもしれない。

「まだバスあるんで…。その…時間遅いし、女の人1人で帰らすの危ないかなって…思ったんすけど…」

下心を隠すように最もらしい理由を並べる。
けれど最もらしい理由を述べた割には、黄金川の声は自信なさげだった。
いつもの元気良さはどこへやら。

「じゃあお言葉に甘えようかな」

返ってきた言葉に、黄金川は思わずガッツポーズをしそうになった。
すんでのところでなんとかこらえたものの、口元はうれしさで緩みそうだった。

「…実はね、最近誰かにつけられてる気がしてて。ちょっと怖かったんだ」

黄金川が傘をさそうと留め具を外している時に、はそうこぼした。
その瞬間、あのオーナーの顔が黄金川の脳内に浮かんだ。

「マジっすか! そんな事あったんだったら遠慮なんかしないでくださいよ!…っつっても、コンビニで会っただけの俺信用してってのも、難しい話でしょうけど」
「…そんな事ないよ。貫至くんはいい人だって、分かるよ」
「そうッスか?」
「うん、目を見たら分かるの。貫至くんは真っ直ぐな目をしてる。悪い人はそんな真っ直ぐな目、してないから」

じっと目を覗きこまれて、黄金川は固まってしまった。
が期待する『いい人』からはみ出さないように、下心を気取られないように、気持ちを隠すのに黄金川は必死だった。

「…それにしても、貫至くんホントに背高いね。あ、身長は伸びた?」
「あっ、ハイ! 2ミリ伸びました!!」

ぐんぐんバー効果なのかただの成長期なのか判別しがたい身長の伸びに、はクスッと笑った。

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