第9章 まっすぐ!/黄金川貫至
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黄金川は二口からアドバイスを受けたその日から、足繫くコンビニに通い、来る日も来る日もぐんぐんバーを1本だけ買い続けた。
190センチを越える黄金川が、『成長期のお子様のおやつに!』といったポップが書かれるような商品を毎回買って行く姿は、二口や黄金川本人が考えている以上にインパクトが大きかったのか(あるいはそもそも黄金川の見た目のインパクトが強すぎたのか)件のコンビニ店員は黄金川の事をすぐに覚えてくれた。
彼女は大体、平日の17時からのシフトに入っているようで、黄金川が部活終わりにコンビニに立ち寄れば、大抵は彼女に会う事が出来た。
二口提案の『とにかく顔を合わせて覚えてもらおう作戦』は功を奏し、作戦開始から2週間経った頃には、向こうから黄金川に声をかけてくるまでになった。
黄金川は二口に感謝しきりだったし、それに対して二口も悪い気はしなかった。
けれど肝心の恋愛にまで進展できるかどうかは、いまだ未知数な状態。
相談を受けた二口にも、どのタイミングでコンビニ店員から連絡先を聞き出せばよいのかは、計りかねていた。
そんな中、今日もいつもと同じように部活終わりの伊達工バレー部員達は例のコンビニへと足を踏み入れた。
入店のチャイムが鳴り、店員の「いらっしゃいませ」の声が響く。
商品棚の整理をしていた件の黄金川の想い人が、くるりと入口の方を振り返った。
「こんばんは。部活お疲れ様」
「こんばんは!! さんもバイトお疲れ様です!!」
ボリューム調整機能というものが欠如しているのではないかと思うくらい大きな声で挨拶する黄金川に、コンビニ店員―はにこやかな笑顔を崩さなかった。
その笑顔がただの営業スマイルなのかどうかは、傍で二人の様子を観察していた二口達にもよく分からないでいた。
彼女の方から黄金川に声をかけているところを見ると、この先、お客と店員以上の関係に進めそうにも見えたが、いまだこの店員についての情報は少ない。
その少ない情報だけでは、逐一黄金川から報告という名の相談を受けている二口にも、今後の展開は予想しにくいものだった。
「今日も、ぐんぐんバー?」
「そうッス!!」
「…ずっと思ってたんだけど…それ以上身長いる?今でさえ190センチ越えてるんでしょ?」
「2メートル目標ですから!」