第8章 春風/田中龍之介
豪快に涙を流しながらの、田中くんから衝撃の告白。
あんまりにも色んな事が起こりすぎて、いまだこれが現実なのか夢なのか、判別がつかない。
ぼんやりした頭のまま、目の前で泣き続ける田中くんの背をさする。
「あー、カッコ悪ぃな、俺」
「そんなことないよ」
「涙とまんねぇのに?」
「嬉し涙でしょ?」
「そうだけどよ」
涙まじりで2人で食べたご飯の味は、きっと一生忘れない。
美味しいのにちょっぴりしょっぱくて、ほんのり甘くて。もう二度と味わえない味。
食事を終えた帰り道、田中くんは改めて私に告白と、もう一度プロポーズをしてくれた。
もちろん笑顔でOKして、よろしくお願いします、と頭を下げた。
私と田中くんの門出を祝うように、薄桃色の花びらがひらりひらりと舞い落ちる。
2人が出会った交番の灯りが、ぼんやりと宵闇に浮かんでいた。
―fin