第2章 愛してもらいたかった。
視線を感じ目を覚ます。
部屋の隅の座布団にきちんと座る姿はそのスペースしか無いようだった。
金色の瞳が瞬きもせず見つめていた。
「おは、よ…」
掠れた声が出てしまう。
アパートに連れてきたのはいいが、その場所から動きはしなかった。
触れようとすると威嚇をする彼女に手を焼いた。
「ずっと起きてたわけ、ないよね?」
聞いてみても虚しくただ、警戒されているようだった。
「はぁ…」
だるい体を起こして台所に立つ。
「今日は遅くなるからご飯と水置いておくからね」
タッパーに入れた鯖の味噌煮を見せるが瞳はただ、見つめるだけ。
朝ごはんに目玉焼きを二つ焼く。
ちらりと様子を見るが、その表情は揺るがなかった。
白米と目玉焼きを持って彼女の前に行くが視線もそらさず食事にも目をやらない。
「ちゃんと食べなさい」
自分の事などわからないようにただ、敵かどうか判別するような瞳。
「…………はぁ」
食卓テーブルに座り、彼女に見つめられながら食事をとる。
食事が終わるまでずっと沈黙で見つめられる。
思えば彼女と一緒の食事などとったことがあっただろうか。いつも一人で食べていた気がする。
寝静まった頃に台所に行き軽いものをつくり食べていたり、何も食べずに眠ったりが多かった気がする。
実家では彼女は部屋中を磨くようにピカピカにしていた。当たり前のようにあった暖かい部屋や、お風呂、綺麗にのりつけされてる部屋着。
そんなのを思い出し再びため息をつく。
嫌いではないが、重かった。
それは今も変わらないのかもしれない、だが、彼女を引き取ったのは事実。
監視という名目なら、と綱手様や相談役は反論をしなかった。
今や彼女はただの愛玩動物とかわらないのだから。
お手やおかわりなど一般的な愛玩動物に対する躾を施されている。
躾なんてものをされてるのを目にしたとき胸が苦しくなり妙な怒りが沸いた。
彼女は人であったのだから。
人なのだから。