第1章 泣き虫な子。
「そうじゃない!あの娘は女の子よ、カカシ、あんた何も知らないからそうしてられるのよ、あの子が初めて男に犯された日ずっとずっと頭がおかしくなりそうだったわ、ずっとアンタの、名前を呼んでるんだから」
助けに来て欲しかったのだろう。
ずっと、ずっと。
「知らないから…そんな風に装えるのよ!」
「……里の脅威だ」
「違うわ、里の為に犠牲になったのよ」
「紅、頭を冷やせ」
「初めて、ただの、初めて、かもしれない、けど、その初めてが愛がないなんてあの子っ⋯男性が触れることは悪意と不快だと、体に染み込ませたってこと。アンタに何がわかるのよ!!」
見世物小屋での生活。
あんたは、何も知らない。
「お願いだからあの子をこれ以上傷つけないでよ、お願いだから、ねぇ、カカシ、助けて…」
「……俺にはもう資格がない、彼女と結婚して監視をしていた、けれど、彼女はそこを選んだ。俺にはもう、どうにもできないよ」
絶望が体に入り込んで来た感覚に紅は気を失う。染み渡る絶望に息が苦しくなる。
もう、どうにもできない。
そんな言葉で終わらせられた。
頭の中で響く叫び声が責め立てる。
「おいお前、指名だ」
「ぁ、ぁ」
「使えなくなってんじゃねぇよ、来い!」
「は⋯ぃ」
何度も頬を舐め立ち去った。
慰めるように、いってきますと言うように。