第15章 初心者夫婦、初心者親子。
そろりと腕を伸ばされ、ベッドの淵に座り彼女に身体を委ねる。
息子の事を謝らせてもくれなかった。子供の事を謝らせてくれなかった。だから、一緒に逃げて欲しかったんだ。
逃げて逃げて、忘れて、幸せになって欲しかった。
どれだけ息子に傷をつけられても、見放されても、愛されても彼女を護ることなど出来やしないと何度も何度も見てきた。
知っていた。
だから、今度も逃げて欲しかった。
この馬鹿みたいな地獄から。
じんわりと、温もりが冷えきった上半身を温める。ぬるい涙がぽたりと頬を伝い彼女の腕を濡らした。
「でも、凜音の事は旦那様に一緒に怒られて下さいね?私一人では少し、悲しすぎてしまいます。一緒に泣いて苦しんで下さいね、サクモさん。」
「⋯あ、ぁ」
愚息の妻は、誰よりか弱く誰より心優しく誰より愚かだったのに。
今じゃ大きな柱になっていた。
心にじんわりと染みるように落ちていくの声音。
「時々様子を見てきて下さい、私に教えて下さい、それだけで⋯私はあの娘を捨てられます」
「っ」
「いつか、大きくなって、この里に再び人狼が戻ってきたら、あの娘に自然と会えるのに」
「君の夢は随分とまた大きいね」
「はい!私は貪欲ですから、ダンゾウ様仕込みですよ」
鈴が転がるように笑うから。
目を閉じて何度も君に謝る。
「私は、後悔してないです。私が決めた事です、ただ、怒られる時は傍に居てください。離縁を言われたら一緒に居てください。私、カカシさん無しじゃ生きていけないんですよ」
くすくす笑う声。
そっと、抱きしめる。
抱きしめてみてもやっぱり彼女はあの頃のまま、小さく、か細いままだった。
「お父さん、私の子供を愛してください」