第15章 初心者夫婦、初心者親子。
柔らかな髪の毛を撫でながら落ち着かせると、は涙を浮かべて見せるからお手上げになる。
本当に、喜怒哀楽をよく見せてくれる奥様。
「サクモさんも、留守がち、ですし⋯旦那様もお帰りになりませんし⋯私っ、あの子がっわからなくて」
「⋯」
「母親なのにっ!」
むにっと、頬を摘む。
「そうだよ、俺は父親だから一緒に考えよう、ね?」
「っ~はい!」
ダンゾウ様からの愛情は、任務を遂行する事で与えられていると思っていた。
そして、それに喜びを感じたのは確かなのだろう。愛情とは、報酬なのだと。
幼い頃の記憶を思い出し、理解ができなかったのだろう。
玄関からそろりと上がり、を連れて茶の間に行くと、オビトが赤子を簀巻きにしていた。
「へ?なに、うちの子どこに連れてくわけ」
「、飛翔が熱を出してる。サクラんとこ連れてくぞ」
「!」
の顔つきが変わり、ぴとりと飛翔の首すじや額を触る。
「⋯いいえ、大丈夫です。昨日もこの時間に熱を出していましたが、すぐに収まりましたから」
「けど!」
「⋯人狼の稚児のデータが殆ど残されてないのです⋯⋯体調が優れないと恐らく⋯人の姿は保てません⋯それに⋯⋯」
は額を抑える。
「それに⋯?」
「私の記憶が間違いでなければ⋯生まれた時、私は人の姿では無かったのですよ」
獣の姿だった。
人狼である事を知ったのはサクモと、イタチと、ダンゾウから。
人の姿の自分がある事を知った。
「⋯なら、なんでウチの子は?」
「⋯⋯だから、わからないのですよ、人狼としての血が薄いのかもしれませんし、その割には⋯ちゃんと、この子の獣の匂いもするんですよ」
「⋯なるほど」
オビトが背負っていた簀巻きを下ろして、向き合う。
むむむっとにらめっこをするオビト、は子供の様子を一心にみていた見ていた。
「⋯⋯⋯やっぱし、カカシに似てるな」
その発言には目をぱちくりして、緊張感が解れていた。
「はい、旦那様によく似ています」
きゃっきゃとはしゃぐ飛翔の頬をつつき微笑むと、何故か急にこの子を抱きたくなりそろりと抱き上げる。
重くて、あたたかい。