第14章 懐かしさと。
「旦那様、こういう時は、まず何と言うのですか?」
「へ?」
「一、お疲れ様、よくやったね。二、一人にさせてごめんね。三、ありがとう。さてどれでしょうか?」
「全部でしょ⋯⋯愛してるよ」
涙が零れそうだった。
にっこりと微笑み、抱きしめられた。
「寂しい思いをさせましたね、辛い思いを沢山させてすみません⋯でも、もう、独りにさせません」
暖かいの身体の熱がじわりじわり伝わる。
「例え何をされても、どう言われても、気づいてしまったんです。私は⋯ずっとずっと昔から、貴方に恋をしていたのだと。もう、離しませんからね」
彼女の指が頭を撫でる。
柔らかな口調で言う。
どれも心地よくて、どれも愛おしい。
「私と貴方に望まれて産まれた子、とっても愛らしいんですよ」
会ってくれますか?
彼女はそう言って背中をポンポンと叩く。
体を起こすと、むすっとした顔で紅が赤ちゃんを抱いて連れてくる。
そっと、しゃがみ込むと、その腕には小さくて小さくて、愛らしい赤子が居た。
確かに、髪の毛は美しい藤色をしていた。
「あぁ、可愛い⋯」
「まぁ!ほんとうに⋯旦那様抱いてみてください」
そろりと腕を通して膝に抱くと、は赤ちゃんを、覗き込み頬を赤くしていた。
に似た愛らしい容姿。
藤色に輝く眉やまつ毛は美しく、まるで、宝石のように涙で濡れていた。
キラキラと輝く様は、自分の子とは思えないぐらい神々しく感じた。
「大丈夫、旦那様、私達はそういう忍なんです。あなたも私も、沢山人を殺めましたねでも、愚かしくも、それ以上に愛情があるんですよ」
肩の力が抜けた気がした。
それは魔法のよう。は柔らかく強い瞳で微笑む。
「⋯そうだね⋯うん、可愛い子だ」
「えぇ、ほんとうに、貴方によく似た面立ちですね」
クスクス笑う。
「いいや、に良く似てるよ」
涙が止まらなくなりそうなぐらい、暖かい。
とても。
あたたかい。