第9章 愛痛い。
「他人には慎重な娘だ、私がそう育てた。サクモと婚約したというのなら、サクモが狂ったと言いきれた、だが、いくら息子だからといって、そう簡単に婚約などせぬ。」
軽率な娘に育てた覚えはない。
自分と婚約、結婚をするという意味を解っている。カカシを案じたのであればするわけが無い、それでも、が頷いたのなら、カカシに絆されたのだろう。
「はなんと言った」
「それはそれは俺が大好きだと」
「⋯⋯」
「⋯⋯貴方達とは考え方がまるで違うのですよ、俺は彼女と幸せになるためならなんでも捨てます。」
「は捨てられない」
「解っています、それも引っ括めて愛しているんですよ。」
「お前も相当だな」
「勿論、彼女は俺の愛など必要としてくれないのですから」
「⋯⋯好きにしろ。」
「ダンゾウ!?」
「子供はだめだ」
「⋯⋯心しておきます」
部屋をあとにするカカシをぽかんと見つめた。
「何を考えている!ダンゾウ!」
「なら、を殺すか?あれは、有能だとお前達は知っているはずだ」
「⋯⋯」
「カカシを里から出すつもりか?を殺せば自ずとカカシは死ぬか、里を出るだろう。答えは決まっていた。」
「⋯⋯なんて、許容し難い事だ」
ホムラは吐き出すように言えば、ヒルゼンがふと、現れる。
「カカシが言っていた事が全てだ、は愛を望まない、人の優しさを望まない、ダンゾウがそう育てたかどうかは知り得ないが、昔からあの娘は人の優しさを信じていないんじゃよ」
「なら何故、カカシと婚約したと」
「カカシが、どうしてもつなぎ止めたかったのじゃろう。」
「どうしても?」
「⋯それだけ、一人の人として尊敬しているのじゃろう。愛されることを期待せずどれだけ人を深く愛し笑顔でいられるか、カカシは自分には真似はできないと感じたのだろうな」
ダンゾウはほくそ笑んでいた、嫌だと怖いと言っていたあの娘が少し許した男があのはたけカカシとは我が娘ながら大物だと。
「少し様子を見ようではないか⋯」