第7章 恋をした。
「あの子は、ずっとお前の妻として、生きていたんだ」
「俺の奥さん?それは…」
わからないでもない、父さんが引き取らず外に出すとすればそうなのかもしれないと。
「一度だけ、お前を深く愛し、お前に愛されたことがあったんだよ。その時怖くて恥ずかしくて嬉しくて悲しくて言えなかったんだ。自分がお前の何にも役に立てないと思い込んで自ら死んだ」
「それは…」
「それからか、お前に好かれたいと好かれたくない、好かれるわけ無いと彼女は心を閉ざしていたんだ。というよりは全てを受け入れる。お前に好かれるとかよりは、死なないように生きていたんだ」
「どうして…そんなことを」
「僕は彼女の背中を押すしかできなかったから」
幸せになりたいの。
あの子が最初に願ったことだったから。
一輪の藤の花を髪にさして泣いていた。
それは普通の女の子だった。
「俺は、一度も彼女を幸せに出来なかったんだね」
「違うんだ、が賢くなってしまったからなんだよ、どうすれば、お前を傷つけず、お前の邪魔にならず、なんのしこりも残さず死ねるかを考えるようになってしまったから」
生きたいと祈りながら幸せになれないと分かりながら…
「カカシ、もしあの子が最後に何か言うとしたらお前にだと思うんだ。その時のこと僕に教えてくれるかい?」
「…一緒にいくの?」
「…どうだろうね、はきっと今頑張ってるよ、僕のために」
その視線はきっとに向いているのだろう。自分には全く向かないのだろう。は必死に全てを変えようと頑張っている。
近所の人が挨拶をするようになり、視線や小言がなくなり、元のように優しくなった。が一生懸命掃除や畑仕事をして住みやすい家になった。
細々と小さな付箋にあれこれと書いてあることも知っていた。
全てはサクモのために。