第13章 【切】自家撞着の行末/治崎廻
「オジサン、これ落としたよ。」
他人の血で汚れた手袋を持ったソイツはそれを俺に差し出した。他人の血で汚れた手袋。ただでさえ汚いそれを他人が触れている。そんな物、触れられるもんじゃない。
「落としたんじゃ無い。捨てたんだ。」
「でも、道端に捨てたらダメだよ。ちゃんとゴミ箱に捨てないと。」
俺が怖くないのか、距離を縮めてくるソイツは俺の手を掴んだ。────汚い。極度の潔癖で他人に触れられたら蕁麻疹が出る体質。咄嗟にその小さな手を振りほどいたが、いつもなら出る筈の蕁麻疹が出てこなかった。それがこの糞餓鬼、逢崎遥香という俺が唯一触れられる人間との出逢いだった。