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【WJ】短編 -2-

第9章 【甘】及川徹の策略/岩泉一


「そろそろ時間だな。行くか。」


 岩泉に手を握られ、人混みを掻き分け、神社の奥へと足を進めた。


「岩泉?」
「いい場所あんだよ。」


 神社の奥へ進むにつれ、人通りも少なくなった。道も整理されていない為、履きなれない下駄で歩きにくかった。というか、履きなれた靴であったとしても歩きにくいと感じるような道だった。
 暫くその足場の悪い道を進めば、見通しの良い場所へ出た。


「ここ、こんな所あったんだ。」
「おう。昔、ここで及川と秘密基地作ってよく遊んだんだよ。浴衣だったから歩きにくかったな。」
「大丈夫。」


 岩泉は大きな溜息をついた。


「何?」
「…いや、及川だったらもっとスマートなんだろうなって思ってよ。」
「なんで及川が出てくんの?」
「アイツ、こういうの慣れてっから。」
「私は岩泉が及川みたいにサラッとああいうのやってたらちょっと引く。てか、想像出来ないし、もし、そんな所見たら笑っちゃう。」


 別に岩泉がレディーファーストが出来てない云々とかって事じゃない。及川と系統は違うけど、そういう所は多分同じ。飾らず、下心の無い真っ直ぐなのが岩泉で、及川のはなんていうか、キザで、態とらしいっていうか、なんというか。やっぱり顔のせいかな。いや、日頃の行いだな。


「岩泉も及川と自分を比べたりとかするんだ?」
「普段は全然気になんねーんだけど、こういう事となるとな。女はああいうのが好きなんだろ?」
「さあ、どうだろ?まあ、私は苦手だけど。」


 お姫様のように気遣われる自分を想像して、背筋がゾワっとした。


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