第22章 予選なんて待てない【hq 東峰旭】
「旭くん、部活は?」
ここは放課後の図書室。
図書委員の私がここにいるのは当たり前だけど、
バレー部の旭くんがここにいるのは変。
「いやぁ、ちょっと…」
困った時にポリポリと頭を掻く癖は小さな頃から変わらない。
一つ年上の先輩を、『旭くん』と呼ぶのは、母親同士が仲良しで、小さい頃から年に2~3回くらい会っていたから。
大きな身体とは反するように、
ちょっと気が小さくて、
それで繊細で優しい人。
繊細すぎるから、去年度の終わりくらいから今年の年度始めにかけていろいろあったんだ…。
「旭くん。また、へこんじゃったの?春高予選の最中なのに大丈夫?」
「いや、そうじゃなくて…」
否定はするけれど、
気まずそうな様子は相変わらずで、
『なんて言い訳しようか?』と考えている様にしか見えない。
「もしかして…また、年度始めの時みたいにサボる気?そんな事するなら、ノヤっさんにメールして回収してもらうよ」
「回収って…あのな…」
呆れたように、ため息をついて背を丸める彼。
図書室という静かにしなければならない空間。
互いの小さな声が聞こえる様に、旭くんは少し屈んでくれているから、余計に背中が丸まっているように見えてしまう。
今はこんなだけど、バレーをしている旭くんは、
スパイクを打つ時のあの顔は、
すごく、すごく、格好いいんだ。
旭くんが居るから…
旭くんを追いかけて、烏野に入学したのは、まだ内緒の話。
いつか伝えられたら良いんだけど…
今は部活を頑張ってるから応援したい‼