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いとし、いとし【短編集】

第22章 予選なんて待てない【hq 東峰旭】


「ほら、貸して」


突然、背後に立った巨人に手元の本を奪われた。

「あっ…」


私が背伸びをしても届かなかった場所へ、いとも容易く本はおさまる。


振り返らずとも、声で誰なのかはわかった。

でも…

何故、こんな時間にこんな所に居るんだろうか…?


しばらく振り返らない私を不満に思ったのか、


「ありがとうとか無いのかよ…」


と、ひげちょこらしく膨れている彼。




澤村先輩は本当にピッタリなあだ名をつけたと思う。


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