第20章 悪戯には程遠い【刀剣 一期一振】
「「「とりっく おあ とりーとー‼」」」
もうすぐ昼食になるという頃。
執務室の障子戸を開ければ、包丁藤四郎を筆頭とした、粟田口の短刀達に取り囲まれた。
何故、この子達がハロウィンなんてイベントを知っているんだろうか??
悲しい事に三十路に近い私は、ハロウィンなんてイベントで盛り上がった記憶が無いんだけれど…。
『弟達が菓子をねだりにくるぜ』
と、事前に薬研が知らせてくれていて助かった。
一人一人なら可愛い悪戯で済む話かもしれないが、人数が増えれば可愛いものも可愛く無くなる。
ましてや、鶴丸なんかに便乗された時には、もう事だ。
踏み出しかけた足を返して、執務室の中へ戻る。
用意してあった篭いっぱいの棒つき飴を差し出せば、
「わぁーい」なんて可愛らしい声と共に桜も舞い、
ひとつふたつと、目の前に広がっていく肌色の小さな紅葉。
「食べるのはお昼ご飯の後にしてね」
念のための約束をして、一人一人に棒つき飴を握らせた。