第15章 最大の仲直り【krk 緑間真太郎】
「結依は俺のだ。他に渡すつもりはないのだよ」
真太郎の言葉に、
「だったら、泣かしてんじゃねーよ‼」
と、放って、先程の彼は去って行った。
状況がイマイチ飲み込めなくて、私は唖然とするしかない。
「あの…。しん…たろう?」
「悪かったのだよ」
引き寄せられた時とは違って、ぎゅっと、でも、優しく真太郎が私を抱き締める。
黙って顔を上げれば、少しバツの悪そうな顔をした彼が口を開いた。
「昨日、アイツが話しているのを聞いたのだよ。その…。アイツはお前に好意がある…らしい。それを伝えようとしていた。だから、一人にしてはいけないと思ったのだよ」
「真太郎…」
ちょっと顔を赤くしながら話す姿はいつもと違ってなんだか可愛く思えた。
「勝手すぎると高尾にも言われたのだよ。今後は俺も注意する。ただ、やはり俺は疎い。お前が…俺の行動が身勝手すぎると思うなら、そう言ってほしいのだよ」
すがり付くように抱き締める腕に力がこもる。
「結依。俺は、お前が好きなのだよ」
耳元で囁かれた言葉に、私の胸のつかえは飛んで行った。
ちょっと不器用過ぎる彼が、私を想ってくれている事は充分伝わった。
「私も好きよ。真太郎」
同じように、そう囁いて、
彼の背中にそっと手を回す。
ふわりと香る柔軟剤のにおいが、
触れられ慣れた真太郎の手が、腕が、
私を包みこんで、幸せへと導いた。