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いとし、いとし【短編集】

第14章 笑顔は幸せを呼ぶ【krk 実渕玲央】


当日の午前中。

玲央は本当に私を買い物へと連れていき、
私に合う服を身繕い、

その後は私の家に来て、
家にある小物を合わせてコーディネートして、
髪型まで結わえてくれた。


「これで完璧‼可愛いわよ」


鏡の前の自分は何だか違う人間みたいだ。


「ほら、そんな顔してないで笑いなさい」


むにゅっと、私の両頬を玲央が指で上げる。


「笑顔は幸せを呼ぶのよ」


そう言って微笑む玲央の笑顔はとても自然で綺麗だった。

買い物中も思ったんだ。
一緒に歩いていると、色んな人が振り返って玲央を見ていた。

それくらい、彼は素敵なんだなぁって。

そんな玲央みたいになりたくて、



「ありがとう。玲央」

お礼と共に私も笑ってみる。

たぶん、まだまだぎこちないんだろうけど…



「いいのよ。それより…」


そう言って、
玲央が1歩近づいて、
私を抱き締めた。

突然の事に頭は真っ白になる。


「あ、あの?れ…お?」

「やすやすと男を部屋にあげちゃダメよ。それとも、ワタシは男だと思われて無いのかしら?」


玲央の言葉に違うと首を振る。

否、玲央は男だけど、でも…。


「本当、警戒心もないのね。だから、ほっとけないのよ。このまま、ワタシの物になっちゃいなさい。大事にするわよ。結依」


ちょっと腕の力が緩んで、
顔を上げれば、

『どうするの?』と、玲央は目線で問い掛ける。


「好きよ。結依」


言葉はこんなにも女性的なのに、
私に向けられている彼の瞳は、態度は、驚く程、男性だった。

そんな玲央に抗う術はなく、私はコクリと首を縦に動かす。


「後悔しないわね?」


そう言われて、
頬に手のひらが触れて、
玲央のシトラスの香りが近づく。


柔らかく降ってきたキスは

私の熱を顔中に集めた。


コツンと額をあわせて、
「真っ赤になって可愛いわ」と、
私をからかう玲央。



そんな彼が、「やっぱりクラス会には行かなくていいわ」と言い出すのは、それから数分後のお話し。
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