第12章 私だけが知らない【krk 花宮真】
「あれ?早瀬さん。また、やってるの?」
教室の後ろの扉から声を掛けて来たのは、私の救世主。
「花宮せんぱーい‼助けてください」
いつもの様に助けを求めると、
「しょうがないなぁ…」と
私の前の席に腰をおろした。
「どこ?」
「ここです」
わからない問題を指差せば、
「ああ、これはね…」と、バカな私でも分かるように噛み砕いて教えてくれる。
一つ上の花宮先輩。
先輩がこうやって教えてくれるようになったのは1週間くらい前から。
連日、夏休みで誰も居ない教室で頭を抱えている私に、先輩から声を掛けてくれたのだ。
「困ってるみたいだから、放っておけなくてね」と。
こんな事言ったら、バカにされるんだろうけど…
もう、この人は王子様なんじゃないかと思った。
先輩は頭が良くて、優しくて…。
ちょっと…特徴的な眉毛をしているけど、
でも、やっぱり…、カッコイイ。
しかも、二年生なのに、バスケ部でキャプテンと監督を兼任する事になったらしい。
うちのバスケ部は、
最近、なんだか悪い噂が出始めているらしいんだけど、
友人にさえ見捨てられた私にこんなにも優しく教えてくれる人が悪い人な訳ないんだ。
私はそう信じている。