第11章 その花の言葉は…【krk 黄瀬涼太】
それから…
二人で学校の事を話したり、部活の話を聞いたり。
何でもないおしゃべりをして、
少しだけ、甘い時間を過ごして、
涼太は帰っていった。
部屋に残ったのは一輪挿しに飾られた黄色いチューリップ。
「やっぱり、涼太は人気者だね」
花弁をちょんちょんとつつきながらチューリップに語りかける。
「ごめんなさい。でも、涼太は私のだから。絶対に譲らないから…」
望みのない恋
報われぬ恋
そんな花言葉を持つ黄色いチューリップ。
「『望み』か…」
私と涼太はどうだろう?
できれば、涼太とずっと一緒に居たい。
でも…私なんかが、そんな風に望んでいいのだろうか?
涼太の周りには綺麗な人や可愛い人がたくさん居る。
いつか、涼太に振られてしまわないかな?
涼太はいつまで私の側に居てくれるんだろうか?
不安になるのは今に始まった事じゃないけれど…。
この花を見ていると、なんだか漠然とした不安が押し寄せてくる。
でも…
それでも…
私と涼太のこれからに『望みはある』と信じて、
《今、家についたっスよ》
という涼太のメールに、
《おかえりなさい》
と、返信をした。