第37章 かみさまとのやくそく【刀剣 五虎退】
「おひいさま!!あっ、間違えました。主さま…」
出会って早々、呼び方を間違えて涙を浮かべる五虎退。
幾年かを過ごしても見た目は変わらない彼等とは違い、私は歳を重ねる事に成長していく。
本丸を駆け回っていた頃、彼よりも小さかった背丈は、とうに彼を追い越してしまった。
「ごこ、久しぶり」
「お久しぶりです」
はにかむように笑う彼。
私の初恋の相手だ。
お転婆な私に振り回されながらも嫌がる事なく相手をしてくれる優しい彼が大好きだった。
あの時した約束を彼は覚えているだろうか?
「虎くんが大きくなったね」
「はい…。僕、修行に行きました…」
「そっか、ごこは変わらないね」
そっと、手を伸ばして頭をなでる。
ふわふわの髪の毛が左右に揺れる。
じゃれて転げ合っていた頃に感じたごこの香りを思い出す。
すると、
「そんな事ないです…」
と、ぎゅっと裾を捕まれた。
「僕、強く…なりました。主さまの守り刀に相応しくなるように…。お願いします…。僕をお側に置いて下さい」
くりっとした瞳に涙を貯めながら、こちらを見据える彼。
「約束しました…」
と、彼は呟く。
覚えていてくれたんだ…。
「何があっても僕が守ります。お約束します…。だから…」
「ありがとう。『ずっと一緒だ』って言ったのは私なのに、待たせてごめんなさい。これからはずっと一緒にいてくださいね。私を支えて下さいね」
「もちろんです!!」
ニッコリと笑う彼のふわふわの髪の毛が揺れる。
私の隣にはポカンと口を開けている長谷部さん。
さてさて、幼い頃に交わした約束を果たすべく、まずは近侍をする気満々の隣の男士を説得せねば。
これが、私の最初の仕事になりそうだ。
--------------------
『ごこ。わたし、ごこのおよめさんになる』
『おひいさま。お嫁さんはきっと、僕には無理です…。でも、おひいさまがよければ…僕は…おひいさまの一番の守り刀になりたいです』
『まもりかたな?』
『はい。ずっと…お側でお守りします…』
『ほんとう?ずっと、いっしょ?いっしょにいてくれる?やくそくだよ』
『はい。お約束します…』