第33章 進む先は闇。逃げ道は無い【刀剣 明石国行】
「主はん、結依っていいますの?」
不意に今日の近侍、明石に名を呼ばれた。
「えっ?」と、声の主の方を見る。
ヤバい。真名を知られた。
名は魂を縛る。真名を使っての言霊は誓約となる。私はそれを拒否する事が出来ない。つまり、主従関係が逆転してしまうのだ。
だから、男士に真名を知られてはならない。
これは、審神者なら周知の事。
気をつけてたのに何故??
「いくら、目の前におるんが、やる気無い自分とはいえ、脇が甘すぎとちゃいますか?」
ヒラヒラと目の前で振ってみせるのは引き出しにしまったはずの友人の結婚式の招待状。
宛名に書かれている私の名前は政府によって消されていたが、友人が添えてくれたメッセージに私の名が書かれていた。
「こっちも消しとかんと。誰が見るかわかりまへんよ」
彼の手元でヒラヒラと揺れる招待状に絶望する。
本当に、脇が甘かった。