第27章 封印魔法は彼の言葉【krk 高尾和成】
クラスメートが近寄ってきた。
私に用があるわけではないのは明らかで、彼は高尾くんに話し掛けている。
きっと、今の事だろう…。
何を言われるんだろう…。
いけないと思いつつも、クラスメートの唇を読んでしまった。
『覚えたのか?』
『すごいな』
はじめは高尾くんを誉め称える言葉。
秀徳は文武両道で課題も少なく無い上に、彼が部活で忙しい事を皆知っているから驚いたみたいだ。
『なんで?』
『いちいち面倒』
次はきっと、私に対する言葉。
なんで、こいつなんかと付き合ってんの?
聞こえないし、しゃべれないじゃん。
手話なんていちいち面倒じゃないの?
たぶん、こんな感じの事を言っているんだろう…。
聞こえない事を知っている分、言葉に遠慮はない。
それ以上は目にとめたくなくて、下を向いた。
やっぱり、私なんか…。