第25章 男同士の会話なんてそんなもの【krk 小金井慎二】
「ほら、部活行くよ‼」
ガタリと椅子を引いて立ち上がった瞬間、視界の端に火花が散った。
…あれ?
目の前に僅かにモヤがかかるけど、勢いよくぎゅっと目を瞑れば、それはすぐに消える。
うん。大丈夫。何でもない。
それなのに…
「ねぇ、結依?だいじょーぶ?」
心配そうに私の顔を覗き込む慎二。
「えっ?何が?」
「『何が?』じゃないよ。顔色悪いって。今、フラッとしたんじゃないの?」
「平気よ」
「平気なわけないじゃん‼」
「大丈夫だって‼」
「大丈夫そうじゃないんだってば‼」
私達はいつもこうだ。
【喧嘩する程仲が良い】とでも言えば聞こえは良いけれど、
口を開くと何故かこんな風に喧嘩になってしまう。
そして…
この不毛な言い争いを止めるという、なんとも不名誉な役割を担っているのが、慎二の親友である水戸部だ。
今でも、彼は私達の間でオロオロとしている。
「なんで、心配してんのに分かんないんだよ‼体型なんてどうでもいいじゃん‼」
「慎二が皆に言ってたんでしょう?」
最早、売り言葉に買い言葉。
叫ぶ慎二に負けずと叫び返した時、
また、視界の端に火花が散った。
今度はグラリと身体が傾く。
先程と同じ様にぎゅっと目を瞑って、足で踏ん張ろうと力を入れようとした時、
いつもより大きな手が肩に回り、私の身体は支えられた。