第23章 はじまりは苦味【hq 烏養繋心】
誰かの助手席に座るなんていつ振りだろう…?
恋人なんて、そんな浮いた話とはここ数年ご無沙汰だし、
友人達と出掛けるとなっても、ハンドルを握るのは私である事が多いから、車内で座っているだけというのは何となく慣れなくて、居心地が悪い。
「本当、変わったよな」
不意に、烏養くんが口を開いた。
「綺麗になったな」
なんて、ニカリと笑う。
その笑顔が高校時代そのまんまで、
あのときの気持ちを頭の端に思い出して、
なんだか頬が熱くなった。
そもそも、綺麗なんて言われ慣れてはいないのだ。
「何言ってんの?お世辞とか?褒めても何にも出ないよ‼」
照れを誤魔化すように、彼の肩をバシンと叩けば、
「お世辞なんかじゃねぇよ…」
と、片手をハンドルから離して頬を掻いた。
微妙な間で流れる沈黙が気まずい。