• テキストサイズ

いとし、いとし【短編集】

第23章 はじまりは苦味【hq 烏養繋心】


誰かの助手席に座るなんていつ振りだろう…?

恋人なんて、そんな浮いた話とはここ数年ご無沙汰だし、

友人達と出掛けるとなっても、ハンドルを握るのは私である事が多いから、車内で座っているだけというのは何となく慣れなくて、居心地が悪い。



「本当、変わったよな」


不意に、烏養くんが口を開いた。


「綺麗になったな」


なんて、ニカリと笑う。

その笑顔が高校時代そのまんまで、
あのときの気持ちを頭の端に思い出して、
なんだか頬が熱くなった。

そもそも、綺麗なんて言われ慣れてはいないのだ。


「何言ってんの?お世辞とか?褒めても何にも出ないよ‼」


照れを誤魔化すように、彼の肩をバシンと叩けば、


「お世辞なんかじゃねぇよ…」


と、片手をハンドルから離して頬を掻いた。



微妙な間で流れる沈黙が気まずい。

/ 172ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp