第7章 彩駆。
「栗花落を呼べ」
「主上、栗花落様はお妃様と王子とお勉強をしております」
真夜中に?と首をかしげながら、からの部屋の隅を見つめる。
珠翠は、人気がいないのを確認して続ける。
「毒に耐久性をつけるために王子のお世話をしておりましたが、その辛さにとうとう逃げ出し、お妃様がそれを見つけたのです」
「だからなんだ、アイツには関係ないだろう」
「⋯⋯お妃様も今夜から御一緒にと栗花落様に内密に⋯」
深いため息をつく。
どれだけあの娘は⋯どれだけ命をどれだけ心を痛め続けるんだ。
少し優しくし少しの優しさでコロリと転がりかける程何もなくなっていると自覚は無いらしい。
「様子を見に行く、知らせるな」
珠翠は驚き俯いたまま返事をした。
ひやりと、冷える廊下。
王子の部屋に向かうと悲痛の叫び声が聞こえる。
千代は知っていたのか、それとも、ただの同情なのか。
ふと、部屋の外にいた栗花落を見つけズカズカと目の前に立ち説明を求める。
が、彼女も疲労の表情を見せながら部屋の中を指さす。
睨みつけながら部屋の中を見ると、魘される劉輝を抱き抱えベッドで抱き抱えていた。
髪の毛や頬や服は乱れ、引っ掻こうとした劉輝を抱きしめて何度も叩かれていた。優しく微笑み辛いわね苦しいわねと宥める。
「珠翠、下がりなさい。後は私が見ている」
「はい⋯栗花落様、それでは失礼します」
この部屋の傍には人の気配がしなかった。
千代の計らいか、栗花落の計らいかは分からなかったが、恐らく⋯両方なのだろう。
悲鳴をあげ泣きじゃくる劉輝、千代は抱きしめて何度も頭や背中を撫でていた。
これを毎晩繰り返すと?
「千代は、劉輝の倍⋯以上飲んでいるんだよ。」
『私が死ぬことはありませんから、申し訳ありませんこれの5倍でお願いします』
部屋に入ろうとすると、千代は気づき首を振っていた。
「栗花落姫様、王様を連れてはなりませんよ、劉輝は私にまかせて今宵はゆっくりお休み下さい、ね?」
「そうは行きません」
「困ったわね、なら、お妃様の命令よ」
栗花落は眉を下げて困っていた。
千代は泣きじゃくる劉輝を抱きしめて声をかけていた。
「王様、暫くお仕事出来ないことをお許しください」
栗花落は目を丸くしていた。