第6章 番外編
きっと心が泣いているから。
誰より心を削って微笑む。
優しく愛らしい無垢な瞳を失わず。
「主上、千代を⋯」
旺季が何かを言いかける。が、遮ってしまう。
きっと旺季は優しい言葉をかけようとした。
旺季にとって栗花落にとって戩華にとって泣きじゃくる千代にとって。
「可愛い俺の千代、笑え」
「っぐずっ⋯ん、がんばる」
「あぁ、それでこそ俺の千代だ、お前に泣かれると俺達はどうにもしてやれない。だから、お前は笑っていろ」
「っ!ふへ、えへへ」
自分達がしてあげられるのは、この子が愛を忘れないように。
沢山たくさんの本物で愛してあげること。
泣いて笑って、怒って、悲しんで喜んで。
「千代愛している」
「あぁ、愛しているよ千代」
そう言って戩華が抱き上げる千代に抱きつく。
旺季はそれを見て胸が締め付けられ、物凄く悲しくなる。
その娘だって、きっと。
我儘な幸せを持ち合わせていただろうに。
二つの愛がそれを踏みにじるんだろう。
嬉しそうに笑う娘に、悲しみばかりこみ上げた。あぁ、馬鹿だ。馬鹿な娘だ。
けれど、誰より、この娘を救いたいと愛してやれるのは私だろうと目を閉じ拳を震わせた。
そんな悲しい愛でその娘を愛してはいけない。