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【彩雲国物語】彩華。

第6章 番外編


「千代!?君酔ってるのかい?!」
酒の匂いをプンプンさせている。
何故か旺季にしがみついて、旺季の着物を着ている。
主上と栗花落はただただ目を丸くしていた。
千代は栗花落が目に入ったのか両手をバンザイさせてフラフラしながら走ってくる。
「わーい!栗花落さまーかあさまー!だっこー!」
「なぜ兵部にまで向かわせたのですか!」
「あぁ、あいつの仕業か」
ご苦労だったな、と言うが主上の視線は千代に行っていた。
「あんねーきょーね!せーんかのやつにね!はめられそーなったの!おーきさまにおこられるかとおもった」
キャッキャと栗花落に抱きつきはしゃぐ。
「千代てめぇ何でそれを知ってんだ?」
「おーきさまにわたしたよ」
「チッ⋯ビビりやがったな」
「違うもん!陵王様にからかわれて美味しものくれるって話してたら旺季さまにうっしゃいっておこらりて、そんで、書類わたしましたはい」
えへへぇっとふやける笑顔に栗花落は吹き出し、旺季はギロりと主上を睨む。
「まて、お前いつ陵王をんな物もらう仲になった?」
「このあいだぁ」
「いつだ、言え」
腰を上げたかと思えば千代の頬を引っ張る。
いらいれふお、と言いながらにこにこ上機嫌。
バフっっと主上に抱きつき深呼吸している千代の背中を撫でる。
その王の顔は、とても、優しく嬉しそうにしていて旺季は驚いていた。
「どうした」
「せんかぁ、わたしね、たまになきそうになるの」
「ほう」
「つゆりさまとね、おうきさまとね、せんかといると胸がギュってなってほかほかして、なみだがでそうになるよ」
「⋯⋯そうか」
「あのね、いつもねおもうんだ」
顔を上げた千代は涙を浮かべていた。

「私が誰より先に死んでしまいたいって」


胸がぎゅってする。
そう言うとひょいと千代を抱き上げる。
「馬鹿言え、お前は俺と栗花落のモンだ、お前は一番最後だ」
暖かい涙がボロボロこぼれる。
下手くそな笑を浮かべている。
「そっかぁ!そうだよね、そうなんだ⋯そうなの⋯せんか⋯おねがい、しんじゃやだよ」
泣きわめく千代の声は戩華には刃のように突き刺さる。
栗花落も俯き涙を浮かべていた。
知っている。

この娘もまた。
誰より争いを嫌い。
誰より平和と愛を抱えている。
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