第5章 彩家。
水浴びをする千代を眺めながら知らない夢の記憶と、混沌とする感情に深いため息をつく。
抱かれた後は目が覚めると側を抜け湯浴みに行っているのだと思っていた。
座り込み自分で指を入れて涙を噛み締める姿は何処か妖艶で、痛ましかった。
頑なにやめることの無いそれ。
身体を清めるように全身で水を何度か打ち掛け深くうなだれていた。
珠翠が駆け寄り怒鳴ると、いつもの笑みを浮かべている。
ふと、空に浮かぶ月が目に入り舌打ちをしてその場を去る。
体は、唇は震えていた。
真っ赤な目の兎のようで、火傷が浮き上がり不気味なほど美しかった。
魅入られてはいる。
その自覚はあった。