第4章 彩花。
「どういう事だ、藍雪那」
三人は千代を見て溜息をついた。
玉華は泣いていた。
「解っているでしょう、千代様は生きすぎている。だから消えるというのが千代様の最後だと。」
「⋯⋯」
「例え、千代様が今消えても何の不思議も違和感もなくこの世は廻る。元から、この方は居なかったのですから。貴方の為だけ沢山の時を巡って来た、イレギュラーなのですから」
「お前達は知っていたのか」
「えぇ、それは勿論。この場所まで辿り着いたのは今回が初めてですから。愛おしいと思わずなんと想いましょう」
暖かく優しい瞳。
栗花落は座り込み目を乾く程見開いていた。
「この子は、そこまで、そんな下らないことを、何度、くり、返した?このバカを救うために?何度も繰り返し、た?」
「ええ、優しい愚かな娘でしょう。私共以外で知ってるとするなら、瑠花様と、宮廷の狸でしょうな」
「はは、はははは、なんて、なんてこと⋯ 何でこんなことになったの!!!」
月がそろりと、千代を抱き上げると泣いていた。
「解っていないふりはもうやめたらどうです?千代は、王に、愛されるためにしていたのだと」
玉華がこちらへと言い、医者をと言っていた。
「もう、嫌だ、あの娘は、あの娘は⋯っ」
「嫌だ?千代は貴方を羨むのを辞め、傷つけるのを辞め、旺季殿を殺すのを辞め、王だけを守るのを辞め、瑠花を殺すのを辞め、瑠花に囚われ、従うことを選んだ。誰も死なせない事を選んだ、その報いを自分が背負うことを勝手に選んだ。貴方が嫌がる必要もない、これらは全て千代が死ねば元に戻る。すっからりと彼女の存在を忘れられるのですから、何度も、殺したのを忘れられたでしょう?主上」
ちらりと、睨む視線に眉間を寄せた。
「姫、千代を解放したいのならその王をうまく動かすべきですよ。きっと、良くやった、ゆっくり休め、なんて優しく微笑んで千代に声をかければすぐ、全て上手く行きますよ」
「余計なお世話だな」
「そうでしたか失礼しました」
そう言って二人も静かに部屋を後にする。
泣き崩れる栗花落。