第4章 彩花。
「私の、ココロが⋯見えるのです、か?」
その言葉に月は苦笑いをし雪達は笑っていた。
「見えるよ、空っぽの君を見ていたからね。」
「まぁ⋯!どれくらい⋯後どのくらいですか?」
「ふふ、それも教えられないよ」
ムスッと不貞腐れる千代の口に冷ました粥を突っ込む。もぐもぐとそれでも食べるものだから月は笑顔になる。
彼女に触れる度思い出される。
自分ではない、自分たちの記憶。
それを知った時から決めていた。
心が満たんになるまで、ここに閉じ込めてしまおうと。
「八千代、そんなに急いで食べないの」
「玉華姫の作るものは何でも美味しいですね」
「卵焼き以外はね」
「?」
「八千代、君は何が食べたい?」
「私は⋯私は⋯⋯桃饅頭が食べたいです」
「桃饅頭?いいね、後で食べようか」
「まぁ!嬉しい!」
桃饅頭が食べたい。
そんな言葉がやけに懐かしく感じた。
桃饅頭は好きだった。
作ると喜んでくれた人が居たから。
ぼんやりして思い出せない。けれど、美味しいと言ってくれて笑顔になったから。
「なら、桃饅頭とそうだね、杏仁豆腐を用意してもらおう。熱がある君にはピッタリだろう?」
「あん、にん、?えぇ!えぇ!!」
月はにたりと微笑み雪達が何故かぽかんとしていた。
下調べは良くないとかどうとか言い合っていたが玉華はむくりと立ち上がりお任せください!と走り去っていた。
「さて、八千代少し休みなさい、でなければ私達が玉華に叱られてしまう」
「ふふ、なら、そうさせて頂きます」
三人は眉を下げて微笑んでいた。
三人はこの日から時々心の話をする。
私の心はどれだけ乾いていたのだろう。