第3章 彩歌。
「私は貴方からこの呪いを受け、その言葉を飲み干したんです。だから、貴方のように私を嫌う貴方も沢山居ましたよ。私は酷く醜いものに成り果てたのですから」
そうではない。
何故そこまで出来る?
なぜ、否定をしない?
何も拒絶しない?
「愛してるからですよ。理由なんてそんなものでいいではありませんか。理屈が通用しないのが愛ですからね」
「なら、お前は俺を愛していると?」
不意に薔薇姫の言葉を思い出す。
確かに仙人になどなった試しはない。これが、最後かもしれない。
瑠花姫様は特別だ、王の呪詛にも干渉してしまってもおかしくはない。
「ええ、愛しています。貴方の全てを」
私の愛は歪だと何度も言われた。
こんな話し合いも何度もした。
王はその後決まって拒絶する。
こればかりは決まっていた。
そうして、割り切って私を使ってくれる。
それだけで私は頑張れたのだから。
それだけでまた、貴方を救う旅に行けるのだから。
王は席を立つ。
私はそれを見送る。
知ってるわ。
私はこの後宮で最も愛されない妃なのよ。
「なら、これで終わりだ。千代、お前はもう俺のために動かなくていい。」
その言葉の意味が理解出来ず、立ち去る貴方に何も声をかけられなかった。
ただ、ただ、悲しく思えた。
使いたくなくなる程私は醜い生き物になったのだと。
思わされた。
「初めから解っていた、貴方が愛しているのは、貴方がこの椅子に誰を座らせたかった、解っていたわ。だから、貴方に使われるだけで満足だったの、それだけで何度も死ねたわ⋯何度も貴方に殺されて来たのに⋯⋯胸が痛い⋯⋯⋯痛い⋯」
翌朝決めていた事をフラフラと実行する。
王に花等不要だと私が一番理解していたから。
貴方が結ってくれた髪の毛を切り捨てて。
私が愛した全てを切り捨てた。
最後に残った掌には、誰かの血で濡れた刀だけが、残った。
愛を唱えるだけで頑張れた。
それが全てだった。
それさえ、奪われた。
「もう疲れたわ⋯⋯いつから、疲れていたのかしら⋯⋯⋯」
目を閉じると何も浮かばなかった。
愛なくして生きている理由など私には何も無かった。