第3章 彩歌。
「まったく、劉輝より手が掛かりますね」
「お前が俺を愛してると?」
「えぇ、愛していますよ。貴方の為なら私の命何個でも差し出せますから」
「⋯⋯それは忠誠だろう」
粗方拭き終わると、生姜湯を下げようとするが断られる。
「いいえ、それは違います。忠誠とは一つの為にでしょう?私は、貴方を愛しているから、どの世界の紫戩華も愛していますから。忠誠ではありませんよ」
目を見開き視線をそらす。
座れと言われ手拭いを持ったまま向かい合わせに座る。
「私が貴方を死なせないと勝手するのは私の愛で、自己満足ですから。成し遂げたい事があり、それを貴方は手助けしてくれた。貴方は私を愛してくれて信じてくれた、だから、貴方の為にどの世界の貴方も救う。私がそう決めた、勝手にしている事に過ぎません。これを世は忠誠とは言いません。」
「だが、その俺と俺は別人だ、当然お前も理解しているのだろう」
「はい、それでも何度でも私は愚か者なので貴方を愛すでしょう。そして、一度の夢物語で何百、何千と貴方を救う旅に行けるのですよ」
王は違和感に気づく。
あぁ、そうか、彼女は愛してほしいからという理由ではないのだと。
だから、これ程までに自分に無関心。
関心なのは心配である公子達や旺季なのだと。
愛や恋のために此処に居座ることはしないのだと。
道理でどうにも出来ないわけだ。
愛してはくれているが、見返りを全く必要としていない。
見返りがなかろうがあろうが、愛してると言うのだろう。
「何故、そこまで出来る、何度も死してまで」
「何度も貴方の死を見て苦しくて、悲しかったからです。何度も阻止しきれず、辛く悔しかったからです。人はそれを愛と呼ぶのでしょう?」
無垢な瞳。
「少なくとも、私はどの貴方も愛しています」
「お前は、幾千の俺の死を見て可笑しくなったのか、忘れたのかは知らぬが、それは最早俺を愛してはいないだろう」
「⋯はい?」
「お前が見てるのは俺であっても無くてもかまわないんだ、中身に無関心なのだからな。そうしたのは俺でありそうさせたのも俺なのだろう」
困惑した表情をする千代。
やっと、むっとした表情意外を見れた気がした。
「お前は何人の死を自分勝手に請け負った?それは他人の気持ちを無視したものだ、お前はそれを望んだと?」