第3章 彩歌。
千代はクスクス笑う。
「もっと、虚しくなったり寂しくなるのかと思ったんですよ?けれど、胸がとても暖かい⋯沢山の人の沢山の優しさが今を生み出したのですから」
薔薇姫は目を見開き、愛でる様に細目て千代を眺めた。
「そして、私は沢山殺しましたからね。静蘭の親や親族、劉輝達の兄弟、それだけじゃないですね、ふふふ⋯罪悪感と、愛おしさで生きていかねばならぬのですよ、例え私が今果ててもこれを繰り返す様に次の世界でも⋯消えてなくなるまで⋯それが私の愛の罪です。」
「⋯⋯王はそれを望んだと?」
「いいえ、彼は⋯何処かの世界で私が満足するとお想いだったのでしょう。けれど、彼を失った時、いいえ、毎回あの人を失う度、兄弟や可愛い清苑達を失う度決めたのですよ、どの世界でも救おうと」
「そんなんだから、身体が死んでしまうんじゃ、千代忘れてはならぬ。留まることも償いじゃ、だから、瑠花姫はそなたをどうしてでも留まらせた。勿論姫様の孤独もあっただろう、けれど、千代。知っているものはとうに、分かっておる。とっくに⋯そなたが唯一望むものを⋯」
小首をかしげる小さな新米仙人の頬をふにふにと触りながら微笑んだ。
何故か二人はバタバタと戻ってきて茶葉溢れる湯のみを見てクスクス笑った。
愛おしい二人。
薔薇姫に咎められお茶の入れ方を教わっているのを眺めていた。
あぁ、幸せだ。
もう消えても悔いがない。
「ダメじゃ。なら、これで最後じゃ。これで、そなたの一生が終わりじゃ、心して生きねばな」
薔薇姫の言葉に眉間を寄せる。
静蘭を抱きしめて、愛しい弟夫婦を眺めて、これ以上の幸せなど私は知らない。
それで良かった。
十二分だった。