第2章 彩香。
その声に千代は聞かぬ振りをして後片付けをする。
穴あきのこの屋敷は毒ばかりが来る。
汚らわしいと眉間を寄せながら洗い物をする。
臭いを嗅いでは投げ捨てる。
茶器さえ毒が染み付いていた。
子供にこんなものを与えるわけにはいかない。ましてやあの第六公子は弱すぎる、優しすぎる。誰に似たらああなるのかため息をつく。
「手伝うよ」
「⋯ありがとうございます⋯」
「おい、俺を無視か」
「貴方に出来ることなど何もございません」
眼鏡を忘れていた千代は戩華を見ることは出来なかった。
鬼姫が毒の仕分けを手伝ってくれている。
酷いものだ。飲み水にまで混ぜてくるとは少しやり過ぎたかと反省もする。
千代は毎朝家から水やら食料を持ってきているため、カタチだけ献上されたものや運ばれた膳を受け取る。
「劉輝があんなに食べてるのを見たのは久しいよ」
「弟ならもう少し出来たでしょうに、私が精精出来るのは幼子の彼に食べやすく戻しにくくするだけです⋯」
「十分だと思うよ、戩華、君暇なら拭いてくれない?ほら」
「俺がやるのか!?」
「君暇でしょう?そもそも君が言ったんでしょう、旺季も怒っていただろうに、千代の安全は保証されているのかって、気が向いたら様子見をしてやるって」
「だからこうして見に来ただろう」
「用がないなら追い出されても文句は言えないんだよ」
「⋯此処は俺の」
「はいはい、ほら手伝う」
千代が持ってきた手触りの悪いタオルを手にして眉間にシワを寄せる。