第1章 彩華。
出会ったのが運の尽き。
出会ったのは必然。
二人はそう言って笑ってくれた。
彼女の記憶はあまりない。
ぼんやりと、浮かぶのは意地悪そうな笑みを浮かべ優しく抱き上げてくれる温もりと、馴れ馴れしく愛おしげに名前を呼ぶ凛とした声音。その声音にいつも僕は嬉しくなり頷くばかり。理由など聞かず黎深のように彼女の肩に頭を預ける。
「邵可。忘れないでくださいまし、貴方達の姉上を。私は寂しがり屋ですからね、いつも傍で見守っていますから」
頷けば嬉しそうに頬に口付けをする。
懐かしい、とても懐かしい思い出だ。
「父様!!もう、父様!!起きて!もう、あ!おはよう、父様」
娘の怒鳴り声をぼんやり見つめ、そういう顔も妻に似てきたなと思い老けていると、困ったような顔をして静蘭が顔を出す。
「旦那様、おはようございます⋯お休みの所申し訳ございません」
「お客様よ!お客様!!」
誰だろう?
「そうか⋯あぁ、おはよう、秀麗、静蘭。」
がくりとうだれる2人に微笑み着替えたら行くよと言えばお茶を出さなきゃやらなんやら騒いでいた。賑やかな朝も嫌いではない。
だが、騒がしい影達に首を傾げる。
来客と聞いていたがこんな時間に誰だろう、しかも、影達がざわめくなんて⋯紅家に関わりのある人物なのだろうか。
着替える手を早め、足速に客間に向かう。