第10章 彩稼。
「いや、お前もきっと、止めさせたかった、だから、蒼姫を孕ませ産ませた、けれど、あの娘は変わることなく、お前の願いを通し続けた。あの娘は知らないんだ、人の願いが変化することを、気持ちが変化するということを。知らない娘なんだよ」
「⋯⋯蒼姫は⋯お前の娘だろう」
栗花落は目を見開き微笑む。
「あぁ、千代がそう望んで、そう決めたからね」
栗花落の胸ぐらを掴む。アレは、俺とお前の娘だ。
そう言えば、彼女は頷きも否定もしなかった。
「なら何故、お前は、蒼姫なんて名前を許したんだ?千代はな、旺季に愛されていた。お前に苦しめられていると思ったのかあいつは酷く千代を可愛がり、彼女の味方であろうとした。娘を愛せずとも、その名を聞くだけで思い出せるよう。もう、お前は一人ではないと」
「っ!」
「まぁ、調べて見つかる筈がないんだ、戩華。千代は、私の娘は幾度と無く繰り返したんだ、お前が一番願ってくれた、私との安寧の日々を叶えるために」
手が震えた。
「俺は⋯お前以外愛することは無い」
「知ってるさ⋯⋯けれどね、戩華。お前は千代をちゃんと愛してたよ。劉輝を私に任せて千代と隠居生活するぐらいにはね」
知らない。
そんな話。
知るわけがない。