第10章 彩稼。
「千代、ほら、って、千代!?」
劉輝が俥に足をかけると、座り込んでいた千代がぱたりと倒れる。
慌てて降りて駆けつける。
「栗花落様⋯あの⋯」
「ひどい熱だ⋯邵可に部屋を借りよう」
「⋯母上、!その、余の⋯」
「違うの、さっき、戩華にも怒って⋯」
⋯⋯。
⋯⋯。
???
劉輝と、栗花落は倒れた千代を見てゴクリと喉を鳴らす。
戩華を怒って?
何で怒らせたのだろう。
千代はちょっとやそっとじゃ怒らない、千代が戩華に怒っているところなど見たことがない。
「り、劉輝。邵可に氷と水枕を」
「わ、分かった!楸瑛!絳攸少し手を貸してくれ!」
二人は思い出していた。
千代はこんな朝に何故こんなところに居たのかと。
「あははははははははははは」
薔薇姫は大笑いをしていた。
千代はうーんうーんと魘され、邵可は静かにと言うが笑っていた。
秀麗は真っ青な顔をして笑い事じゃないと叱っていた。
「秀麗、お前は千代姫様に会ったことがあるじゃろうに」
「へ?!」
「幼い子⋯そこの栗花落姫と」
「えぇ先生の事は覚えているけれど⋯」
栗花落は薔薇姫に首を降る。
そういうものだから。
劉輝は首をかしげていた。
「にしてもだ、あの戩華を怒ったとは」
「何をしたんだろうね」
「多方戩華が悪いだろう」
「それはそうじゃな」
「⋯父上が?」
「千代でなくては戩華の王妃は務まらぬ、おや、王様は知らぬのか?」
薔薇姫はくすくす笑っていた。
劉輝と秀麗はこくこくと頷き二人の頭を撫でていた。
「千代姫はな⋯」
「だめ、れす、よ」
真っ赤な顔をして潤んだ瞳が薔薇姫を睨む。