第10章 彩稼。
月からの手紙だった。
内容は元気にしているかい?弟達が貴陽に行っているからもし会ったらよろしくね。と言うだけ。
戩華なら読んでいてもおかしくない。
だけど、自らで渡すなんてどう言うつもりなのか、大体戩華の寝付きが悪いのはどう考えても暑さだろう。
何故私の夜伽が関係してくるのか。
落ち着け、落ち着けと首を降る。
ふと、視線を上げて見ると驚いた。
「りゅ、りゅ、りゅ劉輝!?」
何故か邵可の家から出て来た劉輝と鉢合わせをする。
劉輝も千代を見て真っ青な顔をして、栗花落は額を抑えていた。
後ろに控えているのは恐らく絳攸と楸瑛だろう。ふと、楸瑛を見て、似ていると感心してしまう。
「はっ、千代、んんん!?!?!」
「千代、これには深い事情があるんだよ」
「深くても浅くてもどうでも良いです!そこに座りなさい劉輝!」
「母上っその!」
「座りなさい!」
邵可邸の正面に劉輝を正座させる。
栗花落の護身刀を抜き出し、絳攸と楸瑛も並べた。
「貴方達、栗花落様を困らせていたのですか?」
ペチペチと刃を素手で叩きながら言う千代。
劉輝は震え上がり、絳攸と楸瑛はこんな人だとは聞いてないと顔を真っ青にしていた。
「き、きょうは、その⋯母上、そのだな、そうだ!氷を!氷を届けに参ったのだ!?」
「執務は片したのですか?絳攸殿」
視線をそらす絳攸。
「栗花落様の静止を破ったのですか?楸瑛殿」
視線をそらし、ハイ⋯と言う楸瑛に二人はブーイング。
「あらあら、ならお仕置きが必要なのですか?可愛い子達」
「す、すまぬ!ど、どうしても!秀麗の顔を一目見たかったのだ!そ、それで⋯無理を言って⋯」
千代は目を丸くしていた。
一目見たかった、だから、執務を投げ出した。
「劉輝⋯貴方はおバカさんですね」
千代は劉輝の前にすわる。
「⋯昔昔に教えたでしょう、貴族の結婚とは意味がある事、紅家の長男の娘がそう易々と嫁に行くなど考えられない事だと」
「⋯だ、だが、秀麗は美しく⋯素敵な女性だ⋯」
「なら、貴方がすべきことをしてから堂々と会いに行けば良いのですよ。」
栗花落はほっと胸をなでおろしていた。
これで、劉輝がしばらくは真面目に執務に取り組むと。
だが、恋は盲目と言う。