第9章 番外編2
「あのバカ戩華か!!!」
旺季の叫び声に栗花落はうんうんと頷いていた。
人手不足が少しずつ痛手になってきている今、千代は旺季の大きな手助けだった。
それを戩華は連れ去り、彼の心の癒しだった可愛い孫まで旅に出したと聞いたら怒りが爆発する。
「で、いつ戻ると申していたのですか」
「⋯わからないよ」
「どちらがです?蒼姫?戩華?」
「⋯どっちも」
真っ赤な顔をした旺季を見て額を抑えた。
確かにそうなるよ。
「で、あの夫婦は今どこに」
「あのさ、王様だからアイツは此処に留まっていたけど、王様じゃないんだ、戩華を繋ぎとめておくものなんて今の王宮にはないんだよ」
「なら千代を置いて一人でどこへでも行け!!」
冷静沈着が売りの弟の崩壊に栗花落は肩をもんだ。
「落ち着きなさい、旺季が怒鳴ったところで誰一人帰らないよ」
「だから腹立つのです」
「⋯まぁそうだよね⋯うん⋯」
「あの夫婦に護衛は?」
「要らないよ⋯と言うかあの夫婦襲うのは野生のパンダか熊ぐらいでしょう」
確かにと旺季は深呼吸をして落ち着く。
にしてもだ、あの馬鹿王を置いて行って⋯ふと、思い出す。
「蒼姫の護衛は?」
「静蘭だよ」
「ほう」
「まぁ、後悔してたけど、していないだろうさ」
「⋯⋯そこだけは褒めて差し上げましょう」
「あぁ、劉輝は私達とは考え方が全然違うんだ、そこも少し見てあげなよ」
旺季は不満げに返事をしていた。
ふと、千代の様子だけが気がかりだった。
無理をしていなければいいと。
願うばかり。