第9章 番外編2
少し戻って⋯⋯⋯
劉輝がにたにたとしていたから何かと思えば驚く。珠翠に案内されたのは小さなお姫様の部屋の前だった。
お待ち下さいと言われ、出てきたのは自分に似た髪の毛、母に似た赤い瞳の妹だった。
「は!初めまして!蒼姫と申します。この度は長い旅にお付き合い頂くことになりますがよろしくお願いします」
何も聞いてないぞ、劉輝よ。
長くなるとも。
妹の護衛だとも。
何一つ聞いてないぞ。
「お初にお目にかかります、茈静蘭と申します。蒼姫姫様」
ぱぁっと頬を赤らめ見つめられる。
「ふふ、よかったぁ!熊さんみたいな方ならどうしようかと⋯劉輝兄上の様な優しそうな方で安心しました」
「光栄です、姫君」
「ふふ、本当に長い旅になるわ、蒼姫で構いませんよ⋯二人旅ですから」
もっと聞いてませんよ!!
二人旅?
何処へ?
私には秀麗お嬢さまの護衛があるんですよ?
母から任されているんですよ?
「では、蒼姫。早速ですがどちらへ?」
蒼姫は耳を貸してくださいと言うもんだから膝をつくと、小声で告げる。
「行き先は藍州なのですよ、でもこれは極秘なのです。父から託されたお仕事ですから」
「何故藍州に?」
「⋯⋯母上の心を三人の同じ顔をした妖怪から取り戻して来るのです」
茶番だと、察するが栗花落師は眉間をもんで首を振っていた。
事実らしい。
蒼姫は目を輝かせていた。
あぁ、父に振り回らせる妹を見ては付き合ってあげるしかなかった。
「その前に、瑠花様なる方の処へよって頂きたいのですが⋯ 」
「え、えぇ」
「では、静蘭よろしくお願い致します」
頭を下げる蒼姫を見て苦笑いをする。
「蒼姫様とバレてはなりませんからね、ここは私と兄弟ということにしましょう」
蒼姫は目を輝かせ、変装ですか!と嬉しそうにしていた。
お馬鹿な弟を思い出し、この愛おしい誰より愛を注ごうと誓った妹を優しく見つめていた。
そうして、凸凹兄妹の旅がはじまった。