第8章 彩火。
動揺する栗花落、蒼姫もあまりの事に戩華を見つめ固まっていた。
「勘違いするな、別に出てけって言ってるわけじゃないだろう」
「えっ、言ったよね?言ったよ!今!」
栗花落は蒼姫を抱き締めて戩華を睨む。
「蒼姫、お前の護衛を劉輝から出してもらえ、俺が言ったと言うなよ。千代に勘づかれたら面白くないからな」
にやにやと笑う戩華に小首をかしげる。
何を企んでいるんだ?
「それと、蒼姫。書物を読め。それが終わったらさっさと千代を連れてこい。」
「千代は今日は旺季の処だよ。」
「⋯⋯」
なんで俺が置いていかれて旺季を優先されるんだと眉間を寄せるのを見て栗花落は苦笑いした。
「そりゃあそうでしょ、千代が喜んだからと言って旺季達の大反対を押し切ったんだから。」
「千代は関係ないだろう。」
言い分は最もだった。
だが、栗花落は言えなかった。
旺季を労るために赴いているなんてこの男が知ったらと思うと絶対に言えなかった。
軽装でこっそり赴き、千代は旺季の話や、劉輝に対してなどを話していた。
最近は惰眠を貪るこの男とは違い、そんなことに勤しんでいた。
倒れている千代をよく、黎深が抱き抱えて府庫に連れて行っていた。
千代はふらふらと帰室するも戩華の我儘をずっと聞いて少し眠る日々。
蒼姫を抱き締めて頭を撫でた。
「姉様?」
「あぁ、そうだ、蒼姫。それとお前に大事なことを託す」
その言葉に目を輝かせるのは千代か蒼姫だけだ。
あとは大概臆するか、嫌悪する。
「はい!」
こっちに来いと、手招きをする戩華。
そそそっと床の前に座ると耳打ちをしていた。
栗花落は何を言っているんだ?とあからさまに不機嫌そうにしている。
「へ?そ、それは誠ですか?」
「あぁだから、お前が必ず持って帰って来い。良いな」
「何故父上が行かないのですか?」
「⋯⋯一度、行った。だが、その時に奪われたからだ。必ず取り戻してこい」
「じ、自信はありませんが!は、はい!」
頭を撫でてやると、嬉しそうに微笑む。
コロコロと表情が変わる娘。
千代の事ばかり思い浮かぶ。
彼女もこうだった。
そう思いながら。