第7章 彩駆。
『はい!栗花落様!』
『栗花落!千代を暴れさせるな』
『あぁ、家の娘は本当に⋯お馬鹿で、愛らしい』
『なら、どこまでも頑張ります!頑張って⋯二人の幸せを見つけたら⋯私も望んでいいですよね、私だけの幸せを』
『その前に見つかったらそっちを優先するんだよ、私達はお前という娘が居るだけで幸せだよ』
『こんなじゃじゃ馬⋯』
『頑張ります!戩華!私頑張る!』
『はぁ、勝手に頑張れ千代』
『うん!!!』
渇望していた終わり。
死。
あの時の感覚を思い出す。
嬉しそうに戩華と名前を呼び消えて行く千代の姿を。ぞわりとした。
「私が消えたらそうなるのですよ、王様がどれだけ嫌がっても。」
「だが、お前は今この世に根付いた。あの娘の母として。」
「⋯ですが、私がこの世から消える事は貴方が死ぬ運命だった事の様に変わることは無いはずです。根付いたのは間違いはありません。ですが⋯所詮⋯人間ではありませんから」
だから、と続けた。
「もう関係ないのですよ、王様。王様は終わらせ方をご存知ですか?」
「⋯⋯知るか」
「そう、です、か⋯簡単です。私は王の剣では死ぬのですよ。前に死なぬと申したのは嘘でございます」
「⋯⋯」
「王様、見せてください。貴方と栗花落様の世界をもっと私に世に自慢してください」
藍家の三人が言っていた。
心が空っぽ。
「千代、お前は賢い。だが、それは出来ぬ。そして、そうはいかぬ」
千代が座る寝台に腰掛ける。
「俺は死を選ばない。お前が居る限り、だから、お前もそれは望めない。わかるだろう」
「⋯⋯」
「最後まで付き合って貰うぞ、妃」
「⋯⋯御随意に」
愛を知らない千代は受け入れ方もまた、知らなかった。
「千代、私の名を呼べ」
「⋯戩華⋯様」
「戩華でいい、それが心地いい」
千代の頬に手を伸ばす。
泣いていた。
ただ、涙を流していた。
ほんの少しこのバカ娘が愛おしく思えた。