第7章 彩駆。
「千代、今日は随分早いな」
長く伸びた髪の毛をゆるりと靡かせ木陰で微笑む娘に眉を下げた。
壊れた。
娘。
元気に微笑み、活気よく笑う娘だった。
真っ直ぐに正しいことを用意周到にする、目的の為ならどんな事もする娘で心配ではあった。
「母上は今日は寝不足ですよ」
桃色がムスッとした顔で言う。
「寝不足?本でも読んでいたのか」
「違いますよ、はぁ⋯」
桃色は千代に抱きつき呆れた顔をしていた。千代は優しく抱きしめ頭を撫でていた。
「なんだと言うんだ」
「眠っていなかったんですよ、姉姫様が稚児を連れていったから」
「はぁ!?姉上が、蒼姫を!?何処へ、まさか、王宮か」
「そうですよ、母上も戻ろうって話をずっとしていたんですよ」
「まて、何故、蒼姫だけ⋯⋯まさか、千代が何か姉上と約束していたのか!?」
桃色は呆れたと言う顔をして口を開くと、千代が手を添える。
「私は、アレを、愛せない、私をこの世に閉じ込めた、アレをあいせないのですよ」
ふふふと、微笑み、千代は桃色を愛おしげに抱きしめていた。
旺季は深くため息をつく。
姉上もこの一年大変だっただろう。
食わぬ千代に食わせ、瑠花の催眠で何度も落ち着かせ、泣き叫んでいた。
何も言わなかった。
誰も何もかけられず、言えなかった。
姉上もまた、ただ苦しんでいた。
王が赤子を望み⋯妃は拒み避妊薬を飲んでいた。それを、ただの粉玉にすり替えた等と、誰にも言えなかった。
その間王には何故か睨まれ小言を言われる始末。
お前が悪いだろうと何度怒鳴ろうと思ったか。
晏樹や皇毅はよく千代に懐いた。
ただ一人末の子を抜いて。