第3章 100年先も
足元に置かれた間接照明がボンヤリと横顔をうつす。
オレンジに照らされるその瞳は伏し目がちで、長い睫毛を強調している。
「ね、ニノ。」
「ん。何よ?」
伏せられていた瞳はクルリと俺を見つめ返した。
まだビール一杯のくせに、既に目尻が赤くなりつつある。
「好き。」
瞳から視線は外さないまま、ポツリと呟いた。
スタジオならかき消されてしまう声も、無音の個室ではハッキリと届く。
「はいはい。ありがとね笑」
想いを込めた目はあっけなくそらされ、クスクス笑いながらニノはグラスに口を運んだ。
「本気なんだけど。」
「ん?…知ってる。」
コトリとグラスをおく音さえも、ここでは大きく響いた。
「ごめんね?」
そう言うくせに、全く悪気もなくあっけらかんとフるニノ。
何なら、先ほど運ばれてきた冷奴を綺麗に等分することに専念している。
…俺、今、一応告白してんだけどな。
「…50回目。」
「え?」
十字に切られた豆腐の右上をつまみながら、ニノがようやく視線をあげた。
「これで、フられるの50回目だよ?」
そう言いながら、自分でも笑ってしまった。
俺、もう50回も告白してんのか。