第7章 君の相手をこの俺に
笑顔でそう言われ、何か吹っ切れそうになったものの、それは気だけであって、今の自分に春高とお付き合いを両立する器用さはない。
(どうしたってなぁ)
相手も脈がありそうなのに何もないと言うことは自分は相手役止まりなのだろう。だから、はぁ。とため息しか出てこない。
同じくこちらにもはぁ。とため息をつく女の子は自前のミシンで東峰のジャケットの丈詰めと少しばかしのウエストを絞るお直しをしていた。
(東峰受けてくれた。凄く嬉しい。ついでにずっと隣に居たくなる!けれども!)
けれども、東峰には部活がある。一生懸命と言う言葉が似合う程に真剣に取り組んでいる部活が。昔から森然達梟谷グループの練習を見ていたら分かる。付き合うとかの色恋沙汰は器用じゃないと出来ないし、東峰はどちらかと言ったら
(不器用だよなぁぁぁ)
あぁ、なんで自分はよりによってあんなへたれ感満載なガラスハート男子を好いてしまったのか。しかも、悔しい事にガラスハートでも気にならない自分が居るのも恐ろしい。まわりの女子達からあんな頼りないと言われているのに。
(はぁ、なんだ?ショーの時のパフォーマンスで逆告白でもすればいいのか??)
めっちゃ盛り上がりそうではあるな。
「良いじゃんソレ!!」
「バカ、バカ。そんなんしたら恥ずかしさでお互い死んじゃうよー」
恋愛相談は菅原先生に限る今日この頃。あれ以来すっかり、名の気持ちは菅原にバレてしまい、
「部活だどうのって理由つける前に言ってしまえ!!」
と背中も強制的に押してくれる。
「まぁ、しない方向で」
と笑う名がじれったく。
「ショーの時名に好きって言ってしまえ!」
「えぇー。無理、無理だって。」
「どうした菅原」
「旭さん!とうとう告白っすか?!」
「あ、旭さんにか、彼女っっっ!」
「あ、おめでとうございます」
「すげー、いーなー彼女」
菅原を始め二年生が続き、そんな二年生達に続き一年生達も祝福の言葉をかける。
「違うからっ、まだだからっ。てかなんないから」
と全力拒否の東峰に、つまらんと言った後輩達。
「そんな反応されても」
と複雑な気持ちになる東峰。
「でも旭さん、アレやんないっすか?」
「あれ?」
と三年が顔を見合せると
「エンゲージリングの交!換!」
と西ノ谷が自信満々に言う。途端東峰の顔は赤くなり
「その手があったか!」