第4章 最後の思い出1
「アウト、アウトー!!」
(まさに私も雑食だな)
と音駒側に打たれたボールを見ながら、長年見てきた練習が走馬灯の様に蘇ってきた。
「名っ!」
クロの声、近づいてくるボール。皆の昔の姿、練習風景。
「苗!!」
と言う直井コーチの声で我に返り、正面は免れたが
バシーーーッ!
名の頬にアタックがもろに当たり、てんてんてんと顔からボールが離れ落ちる音と静まる場。
「うわ痛そ···」
と言う研磨の声とともに
「最後にこれー!?はぁ!?」
と名が小鹿野にボールを投げつける。
「え、俺かよ!っーか当たりに行くか普通!」
名の元気な姿に一安心した事もあり笑いながら反論する小鹿野。
「ヒャハハハ!苗先輩!もろに食らいやがった!ダッセ!!」
「うっさい虎!」
「名ー、今の見えてたろ。ちゃんと避けろよ」
笑いながら声をかける黒尾達。
「心配しろし!」
と頬を真っ赤にしながら黒尾達の相手をする。
「苗大丈夫ですかね?」
心配する直井コーチと
「あんだけ騒げんなら大丈夫だろ。おら、名!いい加減ボールとってこい!こっちのサーブだ」
と猫又監督の一声で名は小鹿野からボールを貰い、音駒に渡す
「ったく、最後の最後であいつは」
はぁとため息をつく猫又に、苦笑する直井。
「選手の邪魔はしない約束だろうが!」
「すみません····」
試合が始まり出すと注意を受ける名
(怒られてる、怒られてる)
と周りが思っているとキッと名が視線を送る。
「こら名!とにかくお前はその顔どうにかしてこい!!」
そう言われ渋々体育館を後にする名を見て皆が思う。今年が最後。自分達がこの場に居られる最後の年。日本の何本の指に入れなくても入れても最後に変わりはない。
「まったく1人だけ最後の顔しやがって」
と猫又。
「最後なのはここに居る全員だっての」
と黒尾。
「なんやかんや長い付き合いだったなぁ!」
と小鹿野達がやる気満々の試合。そして、名が戻りマネージャー位置についた最後の最後の試合は、
「ウェーイ」
「ウェーイ!」
と音駒が勝った。そして、森然を馬鹿にすれば
「うっせー!!名お前森然だろー!!」
「は!そーだそーだ!音駒うっさーい!」