第1章 気になる君
ダダダダダダダダダ
被服専攻の授業時間、ミシンの音が教室に鳴り響く。受験勉強などお構いなしに、被服専攻の3年生は文化祭で発表会と称したファッションショーがある。
ダダダダダダダダダ。
ショーでドレスを出す子は年間でドレス以外に上下1セットを作れば良いため、先生とも相談して年間でワイシャツ、ドレス、そしてスカートなりを縫う事になった。1年生の時から憧れだったショー。やっと出れる事が嬉しくて昼休み中もドレスの装飾を考えていたら
「苗。東峰居るか?」
と声をかけられる。私の席は教室の出入口に一番近い席なためこういった仲介役が多く、今年度になってよく来る菅原は去年同じクラスで、毎回真剣な顔で来ては東峰を呼んで2人深刻そうに話していた。東峰とはあまり話した事はないけど噂では見た目と違うそうで、確かに以前ビーズを落とした時に
「女子ってホントそーゆーの好きなー。」
と嫌な顔せず
「綺麗だな」
と手伝ってくれた親切な人だ。始めは菅原1人だったのが、後輩も一緒に来て、それも来なくなったと思うと今度は別の後輩が東峰の元を訪れるようになった。
「旭さん!!」
東峰は一番後ろの席なのに教室の前で叫ぶ後輩君。
「・・・東峰ー、後輩来てるー」
と東峰に声をかければその後輩君と目が合い
「あざっす!」
と元気にお礼を言われる。
「西谷もう大丈夫だから・・・」
「ダメっす!いつ逃げるか分からないんで!」
とその小柄な後輩君は大柄の東峰に容赦なく、部活に行くようになった東峰と、菅原が来なくなった事で問題は解決したのだと悟った。
そして、家庭科室に向かう名を見て西谷が
「あの女の先輩優しいっすね!」
と言うので一緒に後ろ姿を見送ると
「名かー。あんまり話した事ないなー。」
「話した事ないのに呼び捨てですか!!」
「べ、別に深い意味はないよ。皆そう呼んでるだけでっ」
と慌てまくりの東峰。確かに菅原が来ていた時もよく取りもってくれていたのを思い出す。名を見ているとたまに授業中は上の空、はっとするとノートの隅に何か書く仕草、そして選択授業はとても楽しそうに移動してしき、ときたま教室で編み物を始める少し不思議な女子だった。